成年後見のご相談

成年後見制度は、判断能力が不十分な方について、法律的に保護し、支えるための制度です

成年後見

例えば、認知症の高齢者や知的障がい者、精神障がい者などの方が、預貯金を管理したり、介護サービスや施設入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議や不動産の売買をしたりする必要があっても、自分で行うのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であると判断できずに悪質商法などの被害にあう可能性もあります。
そのため、このような判断能力が不十分な方々を保護・支援する制度が必要となりますが、その一つが成年後見制度です。
成年後見制度については、「判断能力の不十分な方の財産保護」の機能について注目されがちですが、ご本人の自己決定権の尊重や残存能力の活用、ノーマライゼーション(障がいのある方も、地域社会で普通に生活できるような社会を作るという理念)もその趣旨としており、「本人保護」の名のもとに、ご本人の意思決定が軽視されたり、個人としての尊厳が損なわれることがないよう一定の配慮もなされています。

成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つの種類があります
一つは、申立てにより家庭裁判所が援助者(成年後見人、保佐人または補助人)を選任し、選任された援助者が、法で定められた権限の範囲内において財産管理や身上監護を行い、ご本人を保護・支援するという法定後見です。援助者を家庭裁判所が選ぶという点と、援助者の権限が、法律で定められている点(だから「法定」後見制度)が特徴です。

成年後見

本人の判断能力が全くない場合が該当し、家庭裁判所が成年後見人を選任します。成年後見人は本人の代わりに契約を結んだり(代理権)、本人が行った日常生活に関する行為以外の行為を取り消したり(取消権)出来ます。

保佐

本人の判断能力が著しく不十分な場合が該当し、家庭裁判所が保佐人を選任します。保佐人の同意なく本人が民法第13条第1項に定められる重要な行為(保証人になる、不動産の売買や贈与をする、遺産分割協議に参加する等)を行った場合、保佐人はその行為を取り消すことが出来ます。なお、本人の同意があれば、家庭裁判所に申立を行うことにより保佐人に一定の行為に関して代理権を付けることが出来ます。

補助

本人の判断能力が不十分な場合が該当し、家庭裁判所が補助人を選任します。本人の同意があれば、民法第13条第1項に定められる重要な行為の一部につき同意権を付けることができ、また一定の行為に関して 代理権を付することが出来ます。但し、同意権または代理権のどちらかは付ける必要があります。

もう一つは、任意後見契約(ご本人の判断能力がまだ十分あるときに結ばれたもの)により委託を受けた援助者(任意後見人)が、その契約の内容に従って財産管理や身上監護を行い、ご本人を保護・支援するという任意後見です。この任意後見は、ご本人の判断能力が不十分になったときに、申立てにより家庭裁判所が任意後見監督人(任意後見人を監督する人)を選任することによってその効力が発生します。援助者(任意後見人)をご本人が任意で選ぶという点、援助者(任意後見人)の権限が、ご本人が希望する援助内容を基に予め援助者と任意で結んだ契約で定められている点(だから「任意」後見制度)が特徴です。

当事務所では、後見・保佐・補助開始の審判の申立て書類作成、任意後見契約書作成サポートをさせていただいております
判断能力の低下に関わるお悩みや成年後見制度に関するお悩みについては、ご本人の状態やおかれた環境、その周囲にいる方の事情といったものは当然事案ごとに異なりますので、一般的にベストとされている解決策が、必ずピタリとはまるわけではないという難しさがあります。
ただ、そのような場合でも、他によりベターな方法がないかご一緒に探っていきたいと思います。一度ご相談ください。

成年後見のよくある質問FAQ

成年後見制度とはどのようなものですか?
成年後見制度とは、本人の判断能力が、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)により不十分になった場合に、【1】家庭裁判所が選任した援助者(成年後見人、保佐人または補助人)や、【2】本人の判断能力が十分にある間に結んだ任意後見契約において委託した援助者(任意後見人)が、財産管理や身上監護の面で、本人を保護・支援するという制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、【1】の援助者(成年後見人、保佐人または補助人)によるのが法定後見制度、【2】の援助者(任意後見人)によるのが任意後見制度です。
法定後見制度とはどのようなものですか?
法定後見制度とは、本人の判断能力が、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)により不十分になった場合に、本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長などの申立てにより、家庭裁判所が後見開始などの審判をし、この審判に伴い選任された成年後見人などが、財産管理や身上監護(日常生活を見守り、必要な医療・福祉・介護サービス等の契約や手続きを行ったり、そのサービスが適切に行われているかチェックしたりすることなどをいいます)について、与えられた代理権、同意権または取消権を行使し、本人を保護・支援するという制度です。
法定後見制度には、本人が有している判断能力の程度により、3つの類型があります。
(1)後見類型:精神上の障害により、事理を弁識する能力を常に欠く状態にある(自己の財産を管理・処分することができない)方を対象とします。援助者として成年後見人が選任されます。
(2)保佐類型:精神上の障害により、事理を弁識する能力が「著しく不十分」である(自己の財産を管理・処分するのに常に支援を必要とする)方を対象とします。援助者として保佐人が選任されます(保佐人に与えられる権限は、成年後見人と比べて小さくなります)。
(3)補助類型:精神上の障害により、事理を弁識する能力が「不十分」である(自己の財産を管理・処分するのに支援を必要とする場合がある)方を対象とします。援助者として補助人が選任されます(補助人に与えられる権限は、保佐人と比較して小さくなります)。
任意後見制度とはどのようなものですか?
任意後見制度とは、本人の判断能力が十分ある間に、将来精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)により判断能力が不十分になった際の生活や療養看護、財産管理の事務に関し、委託する事務の内容や委託する相手(後に任意後見人となる者)について本人が決定し、あらかじめその内容を記載した任意後見契約書を公正証書で作成しておけば、その後、本人の判断能力が不十分になった際には、任意後見人が、委託を受けた事務を代理して行ってくれるという制度です。
なお、任意後見が開始するのは、本人や任意後見人となる者等の請求により、家庭裁判所が、任意後見人を監督する「任意後見監督人」を選任したときからになります。任意後見契約書を作成したときからではありません。
成年後見制度を利用するとその旨が戸籍に記載されますか?
旧法の禁治産制度では、禁治産・準禁治産の宣告を受けた旨が戸籍に記載されていましたが、成年後見制度では、戸籍に記載されることはありません。そのかわりに、後見、保佐または補助開始の審判が確定したときは、家庭裁判所の書記官は、東京法務局に対し登記の嘱託を行い、同局においてその旨の登記がなされます。同様に、任意後見契約の公正証書が作成されたときは、公証人は、東京法務局に対し登記の嘱託を行い、その旨の登記がなされます。
なお、本人、成年後見人・保佐人・補助人、四親等内の親族などから交付請求があれば登記事項証明書が発行されます。
交付請求の方法の詳細については、法務省ホームページの「成年後見制度~成年後見登記制度~」のページをご参照ください。
成年後見人等に、親族ではない第三者が選任された場合、その報酬額は、どのように決められるのですか?
成年後見人等(成年後見人、保佐人および補助人をいいます。以下同じ。)に対する報酬は、家庭裁判所が公正な立場から算定・審判した金額に基づいて、本人(成年被後見人、被保佐人および被補助人をいいます。以下同じ。)の財産の中から支払われます。つまり、成年後見人等も本人も報酬額を決めることはできず、家庭裁判所が報酬額を決めます。
なお、報酬額の算定に関し、法律に具体的な基準が定められているわけではありません。報酬の対象期間中(通常は1年間)に成年後見人等が行った事務の内容(財産管理および身上監護)や、成年後見人等が管理する本人の財産の内容等を総合的に考慮したうえで、裁判官が、その事案における適正妥当な金額を算定・審判しているとのことです(裁判所ホームページ内の「奈良地方・家庭裁判所」の「手続案内」にある「後見Q&A」Q22参照)。
そのため、家庭裁判所が審判する報酬額は、個別の事案ごとに異なることになりますが、奈良家庭裁判所後見係は、現在の標準的な報酬額の「めやす」を公表しています(ただし、その「めやす」の範囲内に必ず収まるとは限らないとのことです。)。
公表内容によれば、報酬には、「基本報酬」(通常の後見事務を行った場合の報酬)と「付加報酬」(後見事務の内容に応じて、基本報酬に加える報酬)があります。
【成年後見人および継続的な財産管理権が与えられた保佐人・補助人の基本報酬のめやす】
管理財産額(預貯金や有価証券等の流動資産の合計額) 基本報酬(月額換算)
1000万円以下 月額2万円
1000万円超5000万円以下 月額3万円~4万円
5000万円超 月額5万円~6万円
※被後見人等が収益不動産(例:賃貸アパート)を多数所有しておりその管理が複雑な事案、被後見人等の親族間に意見の対立がありその調整が必要な事案、被後見人等の身上監護が困難な事案などについては、特別に上記の基本報酬の50%の範囲内で加算した額を基本報酬とすることがあります。
【成年後見人等の付加報酬のめやす】
付加報酬の類型(3種類) 付加報酬額
【1】訴訟等の特別の行為により被後見人等の財産を増加させた場合 被後見人等が受けた経済的利益の額に応じて決定
【2】特別の後見事務を行った場合(注) 事務内容に応じて20万円以内で決定
【3】【2】の付加報酬を増額する特段の事情がある場合 【2】の付加報酬に加えて30万円以内で決定
(注)例として、後見等開始時に財産調査を行った場合、施設入所契約を行った場合、後見等終了時の引継事務を行った場合など
成年後見人が行なう財産管理の内容は、具体的にはどのようなものですか?
成年後見人・保佐人・補助人の中で成年後見人が財産管理に関してもっとも広い権限を有しており、その内容も様々です。
(1)包括的代理権の行使および取消権の行使
成年後見人は、成年被後見人(以下「本人」といいます。)の財産に関する法律行為について包括的な代理権を持っており、本人に必要な様々な契約を、本人に代わって結んだりします。
また、成年後見人は、本人が結んだ契約などについて必要な場合に取り消すことができます。ただし、本人が行なった日用品の購入など日常生活に関する行為については、取り消すことができません。本人に不利益が生じない範囲で、本人の残存能力を活用し、本人の自己決定権を尊重するとともに、社会から隔離されてしまうことを防止するためです。
(2)通帳記帳の方法による入出金のチェックと費用の支払い
成年後見人は、本人の預貯金通帳の記帳を行い、口座振込通知や引落し通知などと照らし合わせて入出金額に誤りがないかチェックします。地味ながら大切な作業です。また、口座引き落としにできない費用の支払いについては、成年後見人が行ないます。
(3)成年被後見人所有不動産の管理
地震や台風等で壊れた本人所有の建物の修理や本人の自宅をバリアフリーにするためのリフォームについて検討し、必要であれば業者に手配をしたりします。
本人の施設入所等により空き家になった自宅の見回りをすることもあります。建物が傷んでないか、庭の雑草が近隣住民の迷惑となっていないか等を確認する必要があるからです。
(4)重要な財産(本人所有不動産等)の処分
本人の生活資金や入院・入所費用等に充てるために、本人所有の重要な財産を処分する場合があります。例えば、本人の老人ホーム入居費用の支払いに、本人所有の土地を売却して得た代金を充てる場合です。
ただし、本人の居住用不動産(施設入所前に居住の不動産や将来居住する可能性がある不動産を含む。)を処分(売却、抵当権の設定、賃借の解除等)する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。本人の精神面等について特に配慮する必要があるからです。
(5)訴訟行為
民事訴訟(損害賠償請求、貸金返還請求、賃料支払い請求や建物明渡請求などの訴訟)を提起したり、または提起された場合には、成年後見人は、本人の法定代理人として訴訟行為を行います。弁護士に依頼しない場合には、成年後見人が本人に代わって訴訟手続きをすることになります。
他方、人事訴訟(離婚や離縁など夫婦・親子関係などの争いを解決する訴訟)に関しては、本人は意思能力(ここでは、離婚や離縁などの身分上の行為の意味を理解できる能力)がある限り、自ら訴訟行為をすることができます。これら身分上の行為については、当事者である本人の意思を尊重する必要があるからです。もっとも、本人に意思能力があれば本人自ら訴訟行為をしなければならないわけではなく、成年後見人が本人のために訴え、または訴えられることができる(つまり、成年後見人が本人の代理人としてではなく当事者として訴訟手続きができる)とも定められています。
(6)確定申告その他の税金の申告・納税
1.確定申告に関するもの
・本人が所有している賃貸アパートなどの家賃収入がある場合の不動産所得の申告
・本人が所有する不動産を譲渡することによって利益が生じた場合の譲渡所得の申告
・株式の配当金などを受け取った場合の配当所得の申告
・一定額を超える医療費を支払った場合に受けられる医療費控除の申告   など
2.本人が遺産を相続した場合の相続税の申告
3.所得税、市民税・県民税、国民健康保険料、固定資産税、相続税などの納付
(7)福祉手当などの申請等
医療・介護費用などの減免や還付の申請をするほか、各種福祉手当、助成金・給付金などの受給申請をします。
成年後見人が行なう身上監護(身上保護)の内容は、具体的にはどのようなものですか?
財産管理と同様に様々な内容があります。
(1)本人の住居の確保に関する事項
1.本人の住居が借家の場合
・賃貸借契約の締結・変更・更新を行います。
・家賃の延滞や不払いが生じないように家賃の支払いを管理します。また、賃貸借契約更新の際に、更新料の支払いをします。
・賃貸借契約終了に伴う各種手続きや転居先の確保を行います。
2.本人の住居が持ち家の場合
・必要な建物の修繕、増改築、維持管理などに関する契約を業者と締結し、その支払いをします。
(2)医療に関する事項
医療契約や入院契約を締結し、その支払いをします。また、病気の予防・早期発見のため、健康診断の受診を本人に勧めたりします。
(3)介護に関する事項
・本人や家族の要望、生活環境を確認し、適切な介護サービス・施策に関する情報収集や各種窓口への相談を必要に応じて行います。
・介護保険の介護サービスを新たに受ける場合、その前提となる要介護認定の申請をします。また、すでに要介護認定を受け、その有効期間の途中であっても、本人の状態に変化がある場合には、介護度の区分変更の申請をします。認定結果に不服があるときは、各都道府県の介護保険審査会に審査請求をすることがあります。
・要介護(要支援)認定の結果を受けて、介護支援専門員(ケアマネジャー)にケアプラン作成を依頼します。その際、本人や家族の要望を伝えるなど、ケアプラン作成に関与していきます。
・作成されたケアプランに従って各サービス事業者とサービス利用契約を締結します。また、提供されたサービスに関する支払いをします。
・その後も介護サービスが契約の内容に従って提供されているか随時チェックをします。契約の内容に従って提供されていない場合には、各種相談窓口に苦情の申立てを行います。
(4)老人ホームなどの施設の入退所等に関する事項
・本人に適した入所施設選択のための情報収集を行います。実際に施設見学をして本人に適した施設であるか確認することもあります。
・施設の入退所に関する契約や手続きを行います。また、費用の支払いをします。
・入所している本人と面会したり、入所施設の職員から聞き取りを行うなどして本人の生活状況を把握し、契約の内容に従ったサービスが本人に提供されているかチェックします。契約の内容に従ったサービスが提供されていない場合には、各種相談窓口に苦情の申立てを行います。
(5)リハビリに関する事項
リハビリ施設選択のための情報収集を行い、施設利用契約を締結します。また、施設利用料の支払いをします。
(6)日常生活の一般的な見守りに関する事項
本人と定期的に面会して、本人の生活状況、健康状態、何か問題が生じていないか等確認します。
問題が見つかれば、本人、家族、医療・介護関係者、行政機関などと協力して問題の解決を図ります。

成年後見の費用一覧Fee

成年後見などに関する費用につきましては、以下をご参照ください(具体的な案件の内容や難易度などにより費用が増減することもありますので、あくまで概算額となります)。また、報酬額には、消費税および鑑定費用や印紙代などの実費は含まれておりませんので、ご了承ください。なお、お見積は無料です。

後見開始(保佐開始、補助開始)の審判申立て 100,000円~ <実費>
●印紙代、郵便切手代
●精神状況の鑑定が必要な場合は鑑定費用
<加算>
■難易度により加算有り
任意後見契約書作成サポート 100,000円~ <実費>
●公証人手数料、印紙代など
<加算>
■難易度により加算有り